Форум кафедры иностранных языков и перевода УрФУ

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#1 2020-01-31 22:44:24

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Перевод с японского. Проза.

森沢明夫
「かたつむりがやってくる たまちゃんのおつかい便」

 チ、チ、チ……と、薄暗い空間に秒針の音が響く。壁の時計を見上げると、夜の八時過ぎを示していた。
 遅いな。まだかな……。
 座り心地の悪いベンチに腰掛けたわたしは、薬品の匂いのする空気を深く吸い込んで、ため息をつく。
 ここは「鳥出中央病院」の入院棟の三階、廊下のいちばん奥にある待合室だ。頭に
「ど」がつくほどの田舎にあるわたしの実家から、車で約一時間。地域の人々から文字通り「最後のトリデ」と呼ばれる唯一の総合病院で、いま、父の手術が無事に終わるのを待っている。背骨にできた腫瘍を切除して、代わりに人工骨を入れるという、なかなか大掛かりな手術らしい。
 待合室につながる廊下は、少し前に消灯していて、たんとなく薄気味が悪い。
 ときどき、その静かな廊下を看護師さんたちのシルエットがコツコツと靴音を響かせながら行き交う。彼女たちの控え目な靴音が響くことで、むしろ院内の静けさが際立っている気がする。床を這うようなベーンという低い音は、暗がりにぼんやり浮かび上がる自動販売機の呼吸音みたいだ。
 空気が乾燥しているのか、少し喉がイガイガする。
 わたしは小さく咳払いをした。その音が薄暗い廊下のいちばん奥にまでこだました気がして、思わず肩をすくめてしまった。
 夜の病院は、独特の怖さがあると思う。目には見えない無数の糸のようなものが、あちことにピンと張りつめている気がするのだ。すでに照明を落とした各部屋のベッドに、ひっそりと横たわっている患者さんたちが、闇のなか、息を殺しながらそれぞれ何かを深く思索していて、その彼らが発する幽かな「思念」のようなものが、暗い建物のなかに蜘蛛の糸のように張り巡らされて―、それが、えも言われぬ緊張と怖さをもたらしているのではないか。そんな気がする。とにかく、いまだ入院を経験したことのないわたしにとって、この仄暗い閉塞感のあるある空間は、どこか異様な静けさをたたえた異世界なのだ。

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